ひとりで会社設立した後の社会保険加入の手続きの流れ
会社を設立したら、原則社会保険に加入しなければなりません。
個人事業主の場合には社会保険加入が義務ではないケースもありますが、法人の場合、原則加入が必要です。
ただ、はじめて会社を設立したときには、どのようにして社会保険に加入したら良いのかがわからないこともあるでしょう。
そこで今回は、ひとりで会社を設立した後の、社会保険加入の手続きの流れをご説明します。
目次
ひとり社長でも、社会保険への加入は義務!
会社を設立したら、社会保険に加入するための手続きをしなければなりません。
「誰も従業員を雇っていないから、社会保険へは加入しなくて良いのではないか?」と思われる方もいるかもしれませんが、そうではないので注意が必要です。
法人の場合、事業主1人であっても社会保険への加入が義務づけられています。
この点、個人事業主の場合には、そもそも社会保険加入が義務づけられない業種(サービス業の一部)もありますが、基本的に従業員が4人以下の事業所なら社会保険への加入が義務づけられないので、法人とは取扱いが異なります。
特に、これまで個人事業として事業経営されていた方が法人成りすると、忘れがちになるケースが多いのですが、自分一人のためであっても社会保険への加入手続きが必要になってします点に留意が必要です。
加入すべき社会保険とは?
それでは、法人が加入すべき社会保険とは、具体的にどのような保険なのでしょうか?
社会保険という場合、一般的には厚生年金保険と健康保険を意味します。
厚生年金保険は、毎月一定の保険料を支払っていると、老齢になったときや障害を負ったときなどに年金の支給を受けられる保険です。会社に所属していない場合(無職や個人事業主など)には国民年金に加入していますが、会社に所属すると厚生年金に加入します。
健康保険は、毎月一定の保険料を支払っていると、医療費の補助を受けることができる保険です。これも、会社に所属していない場合には国民健康保険に加入していますが、会社に所属すると社会保険の健康保険に加入することになります。
社会保険への加入方法
それでは、厚生年金保険と健康保険に加入するときの手続きは、どのようにするのかを見てみましょう。
書類の提出先
まずは、必要書類をそろえて提出しなければなりません。
書類の提出先は、各地の年金事務所です。事業を行っている場所が登記簿上の住所と異なる場合には、実際に事業を行っている場所の管轄の年金事務所が提出先となります。
奈良市、大和郡山市、生駒市、生駒郡に事業所のある場合には、「奈良年金事務所」が管轄です。
奈良年金事務所
所在地:〒630-8512 奈良県奈良市芝辻町4-9-4
電話番号:厚生年金適用調査課 0742-35-1371
受付時間 平日(月曜~金曜)の、午前8時30分~午後5時15分まで
FAX番号 0742-35-0638
アクセス 近鉄奈良線「新大宮駅」から、徒歩 7分
駐車場 有 (12台)
大和高田市、五條市、御所市、香芝市、葛城市、北葛城郡、吉野郡(桜井年金事務所管内の地域を除く。)に事業所のある場合には、「大和高田年金事務所」が管轄です。
大和高田年金事務所
所在地:〒635-8531 奈良県大和高田市幸町5-11
電話番号:0745-22-3531
受付時間 平日(月曜~金曜) 午前8時30分~午後5時15分まで
FAX番号 0745-22-8638
アクセス 近鉄大阪線「大和高田駅」またはJR和歌山線「高田駅」下車徒歩 5分
駐車場 有 (10台)
桜井市、天理市、橿原市、宇陀市、山辺郡、磯城郡、宇陀郡、高市郡、吉野郡のうち東吉野村に事業所のある場合には、「桜井年金事務所」が管轄です。
桜井年金事務所
所在地:〒633-8501 奈良県桜井市大字谷88-1
電話番号:0744-42-0033
受付時間 平日(月曜~金曜) 午前8時30分~午後5時15分まで
FAX番号 0744-42-0038
アクセス 近鉄大阪線「桜井駅」下車徒歩 5分 JR桜井線「桜井駅」下車徒歩 5分
駐車場 有 (16台)
わからないことがあったら、上記の連絡先に問い合わせると良いでしょう。
書類の提出方法については、窓口に持参しても良いですし、郵送でも提出可能です。05
必要書類
次に、必要書類をご説明します。
社会保険適用に必要な書類は、以下の3種類です。
- 健康保険 厚生年金保険 新規適用届
- 健康保険 厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
健康保険 厚生年金保険 新規適用届
新規適用届は、初めて社会保険に加入する際に必要な届出書類です。
書式は、こちらの日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150311.html
PDFかエクセルかを選ぶことができるので、使いやすい方を選ぶと良いでしょう。
記入の際には、上記の日本年金機構のホームページ上に、記入例も載っているので参考にしながら書類を作成すると良いです。
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150311.files/20161001-2.pdf
書類作成が終わったら、添付書類を用意します。
法人が社会保険に加入するためには、法人の商業登記簿謄本が必要です。これについては、原本が必要で、コピーは不可です。また、発行後90日以内ものが必要です。
また、事業所がある場所が、登記簿上の所在地と異なるケースでは、「賃貸借契約書のコピー」や「公共料金の領収証」など、実際の事業所所在地を確認できる資料が必要となります。
健康保険 厚生年金保険 被保険者資格取得届
次に用意すべき書類は、被保険者資格取得届です。
これについても、日本年金機構のサイトに書式があるので利用しましょう。
サイト上の説明では「従業員を雇ったとき」、とありますが、ひとり社長の場合でも書式は同じです。
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150422.html
記入例もあるので、利用しましょう。
記入の際、被保険者の基礎年金番号が必要なので、事前に年金手帳等を用意しておきましょう。
また、記入の際、社会保険に加入するのが初めての場合には、「事業所整理番号」と「事業所番号」がないので、それらの欄は空白のままでかまいません。
社会保険資格取得届には、原則として添付書類は不要ですが、例外もあります。
ひとり社長の場合に関連する例外として、株式会社の役員が被保険者になる場合には、株主総会の議事録または役員変更登記の記載がある商業登記簿謄本の写しが必要とされています。
ただ会社設立後に社会保険に加入する場合には、新規適用届提出のために商業登記簿謄本を用意しているでしょうから、別途準備する必要はありません。
健康保険被扶養者(異動)届
3つ目に必要な書類は、健康保険被扶養者(異動)届です。
これは、被保険者(ひとり社長)に扶養者がいる場合に提出が必要になる書類です。
扶養者になる人(被扶養者)は、以下のような人です。もちろん、年間収入などによって適用できない場合もあります。
- 同居していなくても被扶養者になる人
配偶者
子、孫、兄弟姉妹
父母、祖父母などの直系尊属
- 同居していると被扶養者になる人
上記以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪、その配偶者など)
内縁の配偶者の父母や子ども(内縁の配偶者の死後、引き続き同居する場合を含みます)
これについても、日本年金機構のホームページに書式と記入例があるので、参照しながら作成しましょう。
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150407-01.html
被扶養者の「課税(非課税)証明書」について
被扶養者の年間所得によって、「課税(非課税)証明書」が必要になるケースがあります。
まず、被扶養者の年間所得が103万円以下であれば、非課税証明書は不要です。この場合、異動届1枚目左下の、「収入に関する証明の添付が省略されている者は、所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを確認しました。」という欄の左側に〇をつけるだけでOKです。
被扶養者の年間所得が103万円を超えて130万円以下の場合には、「課税(非課税)証明書」(市町村役場で取得できます)が必要となります。給与明細書によって代用できる年金事務所もあります。
3枚目への記入について
配偶者が20歳以上60歳未満で、年収が130万円未満の場合、「国民年金第3号被保険者該当届(3枚目)」にも記入して提出する必要があります。この書類には、本人(配偶者)の署名捺印も必要になるので、忘れないようにしましょう。
添付書類
社会保険扶養異動届提出の際には、以下の書類を添付する必要があります。
- 健康保険被保険者証(被扶養者のもの)
被保険者の健康保険被保険者証は不要です。
- 高齢受給者証・健康保険特定疾病療養受給者証・健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
これらについては、交付されている場合にのみ必要です。
また、各種の受給証等を紛失していて提出できない場合には、「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」を添付して提出ます。
書類の届出期限等
これらの書類には、届出の期限があります。
新規適用届、被保険者資格取得届については、会社設立後5日以内に年金事務所または年金事務センター宛てに提出する必要があります。会社設立後従業員を雇ったら、その後5日以内に被保険者資格取得届を提出しなければなりません。
被扶養者(異動)届については「その都度」の提出となっていますが、上記2つの書類とともに早めに提出しましょう。会社設立後に扶養の異動が発生したとき(被扶養者の所得が増えた場合など)にも、被扶養者(異動)届をその都度提出する必要があります。
支払方法にも注意!
社会保険に加入したら、当然毎月保険料を支払わなければなりません。
日頃会社経営で忙しくしているのに、毎月振込に行くのは非常に手間ですから、口座振替にすることをお勧めします。
口座振替を利用するためには、「保険料口座振替納付申出書」を記入して、管轄の年金事務所に提出する必要があります。
この用紙は年金事務所にしかないので、まずは年金事務所で取得しましょう。3枚複写になっていて、1枚目が年金事務所提出用、2枚目が金融機関控え、3枚目が事業主控えとなっています。
必要事項を書き入れてから、口座振替をしたい金融機関に持参して、確認印をもらいます。
そして、1枚目の年金事務所提出用のものを郵送したら、口座振替の手続きができます。口座振替の利用申込みに、期限はありません。
社会保険の保険料徴収方法は、前月分を当月末に徴収する仕組みとなっていて、毎月末(祝日の場合は翌営業日)に引き落としが行われます。また、支払は月単位となっているので、社会保険に月初めに加入しても月末に加入しても、丸々1ヶ月分の保険料がかかります。
社会保険の加入手続きが不安なら、気軽に相談を
社会保険への加入手続きは、そう難しいものでもないので、自分でも行うことができます。
わからないときには、年金事務所に電話をすると、教えてもらうこともできます。(奈良年金事務所の場合、厚生年金適用調査課 0742-35-1371)
すでに税理士事務所と契約されている方なども、もしわからないことがあったら、税理士に相談すれば教えてくれるところもあります。また時間がない経営者であれば、社会保険労務士に手続きを代行依頼することもできます。お知り合いがいなければ、税理士事務所を経由して紹介してもらってください。