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法人化をした場合の給与所得控除のメリット

 

一般的に個人事業をされていて、法人化をすると「給与所得控除」を利用した節税効果があるといわれます。

 

なんてことを聞いたことがある人も、いるかもしれませんが、

「いったい、何?」

「よくわからないけど、とにかく税金が得になるらしいよ」

といった方が普通は多いと思います。

 

なので、今回は、奈良県ですでに個人事業主をされていて法人化を検討されている方向けに、この仕組みについて、説明したいと思います。

あくまで、すでに個人事業をされている方が、オーナー社長となる場合です。細かくいうと、会社を設立した後も、株主と社長が同じ場合です。

目次

 そもそも個人事業の所得の算定方法は・・・

すでに個人事業をされている方で、何年も確定申告を続けてらっしゃる方などは、ご存知かもしれませんが、

まず個人事業主の所得は、「売上」である事業収入から仕入や事務所家賃、交通費などの「必要経費」を差し引くことにより算出されます。

 

例えば、売上100万円で必要経費 40万円の個人事業主の場合

 

【売上100万円ー必要経費40万円=個人事業主の所得60万円】

 

という計算式になります。

そして、この所得から所得控除(医療費控除や、配偶者控除、扶養控除など)を差し引いた残りの金額に所得税が課税されるようになっています。

 

なので、この時のオーナーには

個人事業主の所得から所得税を引いた金額が自由にできるお金になるということです。

 

【個人事業主の所得60ー所得税=純粋な社長の儲け】

このようなイメージをしてもらえると、続きの話が理解しやすいです。

法人化をした場合の法人の所得の算定方法は・・・

では、個人事業を法人化すると、法人の所得の計算はどうなるのかという点については、、、

 

実は考え方はそれほどはかわりません。

 

まず先ほどと同じ金額を前提とした場合

個人事業主時代の売上100を「会社の売上」、必要経費40は「会社の経費」になるとして、計算式であらわすと下記のとおりになります。

 

【会社の売上100ー会社の経費40=法人の所得60】

 

実際、これだけをみると「なんだ一緒じゃんか!」という風に思うかもしれませんが、実は少し違います。

ここで重要なことは、法人化をした場合には会社の儲けはあくまで会社の儲けで、オーナー兼社長が自由にプライベートに使えるお金ではありません。

あくまで会社の事業だけに利用される儲けです。

 

「え!!じゃー生活どうするの?」

「個人事業でやってたほうが楽じゃないの?」

と思う方もいるかもしれませんが、だから社長には会社から給与を払います。

会社は、あくまでも会社というひとつの存在なのです。仕事とプライベートを完全に分けて考えるとわかりやすいです。

なので、社長個人には、経営を任してる労働の対価として役員報酬という形で、給与を支払ってこれがプライベートに自由に使えるお金になります。

 

例えば、これまでの数値例をもとに、個人事業主の所得の金額と同じ額を役員報酬で払うとした場合には

 

【会社の売上100万円-会社の経費40万円-役員報酬60万円=法人の所得0】

 

となります。

よって、こうすると個人事業主時代と同じ所得金額の60万円が社長の給与となり、ついでに法人の所得が0円になるので、会社にかかる税金である法人税が軽微にしかかからなくなります(赤字でも、会社の事務所数や従業員の人数によってかかる税金が一部あるため)。

 

また社長は、役員報酬60万円から所得税を差し引いた額を会社から支給されることになりますが、

実は、ここで法人化して社長に給与を支払うことになったことで、所得税を計算する前に「給与所得控除」を差し引くことができるようになっているんです。

計算式であらわすと

 

【(役員報酬60万円ー給与所得控除ー所得控除)×所得税率=所得税】

 

となります。

これに対して、個人事業主の場合の所得税の計算式を改めて確認すると

 

【(個人事業主の所得60万円-所得控除)×所得税率=所得税】です。

 

計算式を見てもわかるように、個人事業主と違って、「給与所得控除」を差し引ける分、結果として法人化したほうが所得税が安くなり、社長個人の手取りが多くなってきます。

この所得税が安くなっている部分などを、一般的に給与所得控除を利用したメリットと一般的に言われています。

最後に注意点

これまで給与所得控除のメリットを解説しましたが、法人化をすれば絶対メリットが得れるかというと、それはケースバイケースです。節税に失敗する人は、なんでもかんでも同じ方法でできると勘違いする人がいます。医療も同じだと思いますが、病気の症状によって、治療法や投薬内容が変わってきます。

なので、あまりいないと思いますが、単に給与所得控除のメリットだけを目的で法人化を考えるのであれば、しっかりと顧問税理士と相談したうえで、判断する必要があります。

また一般的な注意点を下記に記載しておきますので、これに留意して法人化を検討いただければ幸いです。

売上などが小さすぎると、法人化はまだ早い

この給与所得控除によるメリットなどは、一般的に売上が大きくなればなるほど、メリットが高くなる場合が多いです。なので逆に、売上が小さすぎて、所得も小さければ、そもそもの所得税が小さくなるので、結果的に法人化しても手間が増えるだけで、所得税もそれほどかわってきません。

なので、しっかりと時期を考えて法人化を考える必要があります。顧問税理士と相談しながら、法人化のタイミングを検討するのがベストです。

まだ税理士と契約されていない個人事業主の方は、売上が1,000万程度超えそうになってきたら、または所得税が高いなと感じはじめたら、一度税理士事務所の無料相談に行ってみてください。

1年後の売上や経費がいくらになっているか読めなければ、あまりメリットがない

また法人化をすると社長への給与、つまり役員報酬を払うことになりますが、この役員報酬の金額は、年のはじめに毎月定額の金額を決めなければいけません。

しかし、考えてみてください。

1年先の売上や経費が正確にわかりますか?

例えば、不動産を貸しているオーナーなどであれば、空室率が低く、テナントの定着率も高ければ、予測しやすいと思います。

しかし、なかなか正確に把握できる商売って、やっぱり少ないんです。

そうすると、だいたいの方が売上を少なめで見積もって社長の給与を決めます。でも、そうすると想定より売上が増える場合が多く、今度は法人の所得が増えてしまい、結果として法人税が多くかかってくることになります。